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精密な矯正歯科治療の第一歩。パノラマレントゲン検査の役割と歯科医師が見ているポイント

「歯並びをきれいにしたい」
そうお考えのとき、つい目に見える部分だけを早く整えたい、と思われるのは自然なことです。

立派な家を建てる際に地盤調査が不可欠なように、矯正治療も歯を支える顎の骨や歯の根といった「土台」の状態を正確に把握することが、安全で確実な治療の絶対条件となります。

この記事では、そのための重要な最初のステップである「パノラマレントゲン」について、その役割と、私たち歯科医師が何を見ているのかを科学的根拠を交えながら詳しく解説します。

パノラマレントゲン

矯正治療の目的は、単に歯をきれいに並べることだけではありません。正しい噛み合わせを作り、お口全体の健康を長期的に維持することも、同じくらい大切な目標です。

歯を動かすということは、歯やそれを支える顎の骨に、計画的に力を加えていくということです。そのためには、治療に耐えられる健康な歯、歯茎、そして骨が不可欠です。

もし、見た目にはわからない問題に気づかずに治療を進めてしまうと、治療が計画通りに進まない、あるいは歯や歯周組織にダメージを与えてしまうリスクさえあります。

さらに、パノラマレントゲンは、矯正治療とは直接関係ないと思われた病気の早期発見に繋がることもあります。実際に、矯正相談で撮影したパノラマレントゲンをきっかけに、自覚症状のない嚢胞(のうほう:内部に液体が溜まった袋状の病変)や腫瘍などの病気が見つかることが、複数の質の高い研究報告(システマティックレビュー)によっても示されています。

まさにパノラマレントゲンは、安全な治療計画を立てるための「羅針盤」であり、同時にお口全体の健康状態を確認する「スクリーニング検査」でもあるのです。

「パノラマレントゲン」でわかる5つの重要情報

では、パノラマレントゲン撮影で具体的にどのようなことがわかるのでしょうか。歯科医師が特に注目している、主な5つのポイントをご紹介します。

① 隠れた虫歯や歯周病の進行度
歯と歯の間や、詰め物の下などに隠れている虫歯を発見できます。矯正装置を装着すると歯磨きがしにくくなるため、事前に虫歯をしっかり治しておくことが重要です。
また、歯周病がどの程度進行しているか、歯を支える骨(歯槽骨:しそうこつ)が溶けていないかなども確認します。土台となる骨が弱っている状態では、計画通りに歯を動かすことはできません。
② 親知らずの位置や向き、顎の神経との距離
親知らずが、他の歯を押して歯並びを乱す原因になっていたり、将来的に問題を起こすリスクがあったりしないかを確認します。研究報告によると、パノラマレントゲンは親知らずが将来どのように生えてくるかを予測する上でも有用とされています。その情報をもとに、抜歯の必要性や、抜歯する際の神経との位置関係は安全かなどを判断します。
親知らずと下顎管
③ 顎の骨に埋まっている歯(埋伏歯)の有無
親知らず以外にも、本来生えてくるべき歯が骨の中に埋まったままになっている「埋伏歯(まいふくし)」は、矯正目的のレントゲン写真で比較的よく見つかる偶発的所見の一つです。これも歯並びに影響を与える可能性があるため、事前にその存在を把握しておくことが大切です。
埋伏歯
④ 歯の根の長さや形、異常の有無
歯の根のことを専門用語で「歯根(しこん)」と呼びます。歯根は、歯を骨の中で支える大切な部分です。矯正治療で力をかける上で、歯根が極端に短かったり、形に問題があったりしないかを確認します。過去のケガなどが原因で、歯根が溶けて短くなる「歯根吸収(しこんきゅうしゅう)」が起きていないかもチェックする重要なポイントです。
曲がった歯根
⑤ 顎関節の大まかな状態
口を開け閉めする際の動きの要となるのが「顎関節(がくかんせつ)」です。矯正治療は噛み合わせ全体に関わるため、この関節に大きな問題がないかを事前に確認します。パノラマレントゲンは、顎関節を構成する骨に著しい変形がないか、といった点を大まかに把握するための初期スクリーニングとして役立ちます。ただし、関節内部の詳細な状態や顎関節症の確定診断のためには、必要に応じてCTなどのより精密な検査が必要になる場合があります。

下顎頭
左:変形している下顎頭
右:正常な下顎頭

治療計画を左右する、歯科医師の視点

私たち歯科医師は、パノラマレントゲンを見て、ただ問題点を探しているだけではありません。
上記の5つの情報を含め、レントゲンから得られる無数の情報を、科学的根拠(エビデンス)と照らし合わせながら、総合的に「診断」を下しています。

例えば、「この親知らずは将来のリスクを考慮して、矯正開始前に抜歯するのが望ましい」「この歯は歯根が少し短いので、通常より弱い力で慎重に動かす必要がある」といったように、一人ひとりのお口の状態に合わせて治療計画を個別最適化していくのです。

そのため、レントゲン写真を正確に読み解く「読影力(どくえいりょく)」と、それを科学的根拠に基づいた治療計画に落とし込む「診断力」が、私たち歯科医師には求められます。

パノラマレントゲン読影

まとめ

精密な矯正治療は、まずご自身の口の中の状態を正確に知ることから始まります。そのための基本であり、最も重要な検査が「パノラマレントゲン」です。

ホワイトエッセンス梅田大阪矯正歯科では、見た目の美しさを追求することはもちろん、お口全体の健康を土台とした精密な診断を何よりも大切にしています。安全で、長持ちする、本当に価値のある矯正治療をご提供するために、私たちは一つひとつの検査に一切の妥協をしません。

この記事は、当院の精密検査シリーズの第一歩です。次回は、歯並びの原因をさらに深く探る「セファロ分析」について解説していきます。

ご自身の”見えない部分”の状態を知ることが、理想の歯並びへの最短ルートです。
まずは無料カウンセリングで、お気軽にご相談ください。


当院はJR大阪駅北口から直結、グランフロント大阪南館4階にございます、関西は大阪梅田、岸和田市、京都市、和歌山市に分院があります。

当院のマウスピース矯正の症例数は5000症例以上(※)あり、ブルーダイアモンドプロバイダーを受賞しております。関西でインビザライン矯正をお探しの方は一度無料相談(相談検査費無料)にお越しください。

※2014~2024年グループ全体の矯正治療症例数


治療内容
カスタムメイドで制作されたマウスピースを定期的に交換しながら少しずつ歯に適切な力をかけて歯並びを整えていく矯正治療です。
標準的な費用(自費)
矯正治療費、相談・検査・診断料 無料、調整料 無料
インビザライン(マウスピース治療)
198,000円〜899,800円(税込)
治療期間及び回数
症状によりますが、一般的に2年前後の治療期間となります。
通院回数は、治療段階によりますが、通常2〜3ヶ月に1回です。
副作用・リスク
装着時間が少ないと治療期間が長引く可能性があります。
他の矯正治療法と同様に、疼痛・歯根吸収・歯肉退縮の可能性や適切な保定をしないと治療後に後戻りすることがあります。
医薬品医療機器等法(薬機法)に関する記載事項
・インビザライン完成物は、日本国内において薬機法未承認の矯正装置であり、医薬品副作用被害救済制度の対象外となる場合があります。
尚、インビザラインの材料自体は、日本の薬事認証を得ています。
・「インビザライン」は米国アライン・テクノロジー社の製品の商標であり、インビザリアン・ジャパン社から入手しています。
・日本国内においては、同様の医療機器が薬事認証を得ています。
・インビザライン・システムは、世界100カ国以上の国々で提供され、これまでに900万人を超える患者さまが治療を受けています。(2020年10月時点)

参考文献

  • C. C. O. de Melo et al. (2021). “Incidental findings on panoramic radiographs taken for orthodontic purposes: a systematic review.” Dentomaxillofacial Radiology, 50(6).
  • M. G. G. de-Freitas et al. (2020). “The use of panoramic radiography in the diagnosis of temporomandibular joint disorders: a systematic review.” Dentomaxillofacial Radiology, 49(7).
  • A. Bay-Salgado et al. (2022). “Diagnostic value of panoramic radiography in predicting third molar eruption: a systematic review.” Oral Surgery, Oral Medicine, Oral Pathology and Oral Radiology, 134(1), 108-118.
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